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スキップとローファー1-5巻の感想。進学校の解像度が高い…。

スキップとローファー(1‐5)/高松美咲

久しぶりに「スキップとローファー」を読み返していました。何度読んでも、兼近先輩絡みのシーンが本当にエモすぎますね。

気持ちが救われる青春学園漫画

スキップとローファーは能登半島出身の素朴で前向きな才女である主人公のみつみが、その前向きさで高校の同級生をはじめとした周囲の人に良い影響を与えながら、高校生活を過ごしていくというストーリーです。

作品には、完全なメンタルが陽側の立ち位置であるキャラクターと、どちらかといえばメンタルが陰側のといったキャラクターが配置されており、その中で、陰キャラが陽キャラのちょっとしたことで救われ、それがさらに波及して別のキャラクターを救っていきます。

それが本当にリアルに感じられるというか、「人間、ここで救われたら救われるよなぁ」という瞬間が切り取られている作品で、晴れ晴れとした気持ちにさせられるんですよね。

他の作品で言えば、「ハチミツとクローバー」などが近いかもしれません。

みつみの影響や、周囲の善性の強いキャラクターから、心の持ち方や関係性がとにかく少しずつ少しずつポジティブな方向に変わっていく様子の描き方が素晴らしい作品ですね。

現行の漫画の中では一番好きです。とびぬけて一番。

わかりみの深い悩みと悩みの解消過程が素晴らしい

「スキップとローファー」の作中に出てくる悩みは、虐められているとか、そういう直球の悩みではなく、どちらかというと、「別に仲良くできなくても困らないが、陽キャに苦手感がある」「努力はしているが何者にもなれない気がする自分と他者への嫉妬」みたいな中に抱える類の悩みなのも、わかりみが深いところです。

こういう別に生活上すぐに対処する必要はないけれど、自分の人生にずっとかかっていくであろうもやのような悩みは非常に良くわかります。

そして、そういうもやが晴れる瞬間というのもあり、それは大体、陽側の人との邂逅だったりするんですよね…。

たぶん、10代の子が読んでも?という感じだと思うのですが、20代、30代の社会人で日々の積み重ねの中で心が折れた経験がある人には、どれかが直球でブッ刺さるシーンがあるんじゃないでしょうか。

上位進学校っぽい健全な学園生活描写が良き

尚、舞台となるつばめ西高校は勉強ができる学校ということだけあって、基本的に登場するキャラクターは多少の悩みはあるにせよ、経済的にも精神的に安定しています。

イベントにも基本的にはポジティブですし、勉強が出来るのは当たり前ながら、上位の子はそれで純粋に賞賛されますし、いじめにつながりそうなアクションであっても、ある程度自分で自制が効く子たちが集まっています。

その辺、そこそこ上位の中高一貫校のような、リアルな健全さの雰囲気があり,その中で、大したことのない、しかし本人にとっては大きな悩みを抱えていたりするので、そこがすごく真に迫って感じられるのですよねー。

どのようにでも無難に生きられる中で、どう幸福に生きるかという話です。

(このへん、妻と話していたのですが、妻は「全然わからん…こんな空間ファンタジーでしょ」という感じだったので、バックボーンによってこの辺の感じ方はだいぶ違うかもしれません。)

兼近先輩が最高すぎるんじゃ

そんな本作の中で、主人公のみつみに次いで、陽の気を発し続けているのが演劇部の兼近先輩です。

主要キャラの誰も演劇部には所属していないのですが、入学式で目立った行動をしたみつみを演劇部にスカウトしようとしたところから関係性が始まり、要所要所で影響を与えてきます。

当初の登場時には、空気が読めない嫌な先輩という雰囲気で出てくるため、極めて印象が悪いのですが、話が続くにつれて、印象は一変し、「器が極めて大きい素晴らしい先輩」であることがわかっていきます。

2巻以降の名シーン製造機としての役割は凄まじく、みつみを救うのはみつみ以外である必要もあるため、要所要所で第三者から見ないと出せない正解を示唆して、みつみをポジティブ行動に向かわせる要因となります。

最新刊では、「どうだ!世の中絶対なんてないのだ!」という回収もあり、すっかり兼近先輩のファンである私はウルっときてしまいました。

(「じゃじゃ馬グルーミンup」の最終話に同じようなシーンありましたね)

もっと売れてもいいのにな

兎にも角にも、毎巻期待以上のものが返ってくる作品なので、これからも楽しみであります。

完成度からするともっと売れてもいいのにと思うのですが、少女漫画でもなく、青年漫画でもなく、みたいな微妙な雰囲気の素朴すぎる作品ではあるので、そんなもんなのかもしれません…。もっと売れてくれー!