Amazonプライムで劇場版BLUE GIANT(ブルージャイアント)が配信されていたので観た感想です。原作未読。
「坂道のアポロン」と同じくジャズがテーマの作品です(舞台の時代の違いはありますが)。
テキパキとした展開の作品で、後半の展開が安直な印象があった以外は概ねとても良かったですね。
良かった
キャラクターの魅力はとてもある
仙台から状況してきたジャズ狂いの主人公大(サックス)のあきらかに常人ではない感じとか、雪祈(ピアノ)の天才肌な感じなど、キャラの魅力と能力がきちんと出ています。
その結果、彼らがサクセスストーリーを登る流れが違和感なく受け入れられるのは良かったですね。
どうしても若くして成り上がる系(文化祭ですごい!レベルではなく)だと、成り上がるにもある程度の説得力がないと、うーん、となってしまうので、主要メンバーの「強さ」に納得が出来るのは重要です。
特に、主人公の大は高校生から始めたサックスなのに最初から目の肥えた周囲の人を驚かせる技量を持っている設定です。
序盤の短い時間で天才感か努力の狂人感かを視聴者に納得させないといけないのですが、行動や言動のひとつひとつがネジが一本抜けているので、自然と納得させられるのは良かったです。
原作未読ですが、原作では上京前の仙台パートがあるそうです。
そこがあると主人公のスキルに納得感を持ちやすそうですが、スパッと切って、上京時の様子の中でサクサクっとキャラの強みを描写したのは英断ですね。
玉田くんはあまり好きになれなかったけど、まあ…
まあ、3人目の玉田くん(ドラム)がメンバーに入る流れは正直「うーん?」という感じはありますし、別に玉田くんがすごく良い造形のキャラクタという感じもないのですが…。
とはいえ、ここで素人が入るのかー…とは思いますが、現実的に見える範囲の上達を本人の可処分時間(大学の単位)と引き換えに行っているので、そこまで気にはなりません。
いや、キャラの行動的にはちゃんと大学通えよ…って感じはぬぐえないですが。
玉田くんの人生にとってとても重要なものになったのはわかるし、その選択自体は誤ったものではないにせよ、親元から上京して大学に行っている身分でその行動はどうなのよ…事後報告だし…みたいなことは思っちゃいますね…。
ジャズパートは映像による説得力もあって非常に楽しい
で、音楽アニメなので当然ライブパフォーマンスのパートがあるのですが、盛り上がりどころをしっかり映像で示してくれるのでとてもわかりやすくて良かったすね。
僕は割とジャズは聴くものの、正直上手い下手はよくわからんので「ほーん、上手なんやなぁ…」という率直な受け取り方しかできないわけです。
そんな中でも、ライブを観ている観客がどういった感動を感じているのか(というか、視聴者であるぼくたちがどういう風にこの演奏を受け止めるのが正解なのか)を、電流や衝撃のエフェクトだったり、氷や炎のエフェクトだったりで示してくれています。
エフェクトによって、「ライブのここで感動すりゃええんやな」「こう感じ取れば良いんやな」とわかり、非常に視聴しやすかったですねー。
ムキムキになるのは気にならない
尚、モーションキャプチャーっぽいライブでのぬるぬる動く感じとか、なんかライブになると急に肩幅が広くなってガタイが良くなる感じとかは、多少印象には残りましたが、特に悪い印象は抱きませんでした。
動きがあることでより映像と音楽により引き込まれるので、ライブパート全体としては調和していた(非常に成功していた)のではないかなーという印象です。
若干の不満
雪祈のライブ直前事故は安直の極みでかなり盛り下がったですよ
ストーリー全体の流れとしては、以下の流れなのですが、⑤の直前にドラマ演出のために盛り込まれた雪祈の交通事故はちょっと良くなかったですね。
- ①大と雪祈の出会い
- ②玉田参加でJASS(グループ名)結成
- ③初ライブ
- ④雪祈の挫折と復活
- ⑤So BLUEでの最終ライブ
いや、雪祈のバイト先がガテン系の工事の交通整理な時点で概ねどっかで事故に遭う展開あるのか?と思ってはいたのですが…。
あまりにも安直ではないですか。風の大地かよ…(盛り上がりポイントがないとすぐに誰かが不幸な目に遭う)。
というか、そもそも雪祈がガテン系のバイトを選んでいるのも結構よくわからんのですよね。
バイト代が多少良い方がいいかもしれないのですが、指をケガするリスクをあえて抱えにいくようなタイプの人間にも見えないし。
雪祈はそもそもバーとかでバイトするのが嫌じゃない程度には表面的コミュニケーション能力のあるキャラクタです。
あのスキルがあれば東京であれば別にピアノ講師なんなりの非常勤の仕事はありそうな感じもしなくはないですし、事故を起こすためにあのバイトをさせられていたとしか感じられないんですよね。
そこでしっかりと事故を起こされると、さすがに安直ではー???みたいな気持ちにさせられてしまいます。実際、盛り下がっちゃって一回視聴止めちゃったし…。
何らかの盛り上げ要素が必要なのはわかるけど…
まあ、だからといって何もなくSo BLUEでライブして大成功!ではストーリー的に緩急がないということなのかもしれませんが。
いや、それで良かったじゃん…。どうせラストライブなんだし…。
ただ、まあ、最後にアンコールで片腕で出てきてのライブは普通に感動した自分もいたりはするのですが。いや、やっぱ納得いかねぇなー。
あと、純粋にSo BLUEでのライブを3人そろって万全な状態で大喝采を受けるのを観たかった、というのはありますね。
ぼくはTAKE TWOのオーナーが正しく成長に涙している姿を観たかったんですよ。
あれじゃ3人の成長に感動しているのか、JASSに発生した不幸とそれに向かっていく姿に涙しているのかわからんじゃないですか…。
全体
まあそんな感じで、ラストの「風の大地」展開が良くないものの、全体として大満足ではありました。
特にライブパートがこれだけ盛り込まれていて飽きずに観ていられるのは本当にすごいですねー。
よほどジャズに関心がなければどうしても途中で飽きちゃうのを力業でねじ伏せている感じです。すごい。
いやー、でもストーリーを盛り上げる苦難として交通事故を使うのは本当に良くないっすね。
とりあえず、「交通整理のバイト」「バイク乗り」設定で重要チェックポイント前に予定調和的に事故を起こすのは本当にやめて欲しいですね。
まだ機材トラブルとか、天候トラブルとかの方が、同じよくある流れであっても納得感があって良かったですよ。本当に。