米澤穂信作品をきちんと追えておらず、新シリーズの「本と鍵の季節」をようやく読みました。なので、簡単に感想を記録しておきます。
主人公は高校生2人組、シリーズ続刊決定済ということで、結構期待して読んでしまったのですが…。
正味、「小市民シリーズ」や「古典部シリーズ」のようなキャラクタも含めたハマり感はなかったですかね…。続刊に期待です。
ミステリ部分について
謎解き+隠された意図の組み合わせはおもしろい
最終編での展開に備えてだと思いますが、基本的に本作の各編はそれぞれ単純な謎解きに加えて、依頼者の隠された意図(というか嘘)が含まれている2段構えになっています。
その点、それぞれ面白味がありましたね。過去作のイメージとしては、「愚者のエンドロール」のような感じでしょうか。
執拗に依頼者が嘘が含まれた依頼をしてくるので、最終編の依頼者も当然嘘をついていることが示唆されるのは構成の妙ですね。
一方で、最終編の依頼者が依頼者なので、読者としては嘘が含まれているのか、嘘が含まれていないのか、ちょっとドキドキさせられる構成なのも面白いです。
まあ、そりゃそうよね、という結末にしかならないのですが…。
キャラの魅力は薄目かな…
ダブル主人公でキャラが微妙にかぶってるので印象薄い
で、米澤穂信・高校生・シリーズものとくると、やはりキャラの魅力に期待するわけですが、今作だけでいうと、かなり印象が薄かったですね…。
男子高校生2人で二人とも文化系のそれなりに落ち着いたキャラ、一方で小鳩くんや折木ほうたるのような信条もなしとなると、どうしても印象が薄くなります。
まあ松倉くんには「いいシャツを着る」とか信条があったりはしますし、性格も違うのですが…いや…大きいくくりでは一緒なんだよなー。
正直、「古典部」の奉太郎と里志、「小市民シリーズ」の小鳩くんと健吾ぐらいのキャラ分けが欲しかったところです。
あと、ヒロイン不在なのも大きいですね。千反田さんや小佐内さんの存在は大きかったんや…(小佐内さん、実は全然登場しないけど…)。
「Iの悲劇」の万願寺さんも、観山さんがいることで掛け合いがいきいきしたところはありますしね。
↑アニメ版前でも、「わたし、気になります」ヒロインの存在は強かったですよね…。
ダブル探偵役も若干ボヤっとするところある
本作の構造上仕方がないところではありますが、2人とも探偵役なのは若干焦点がはっきりしない感じを受けなくもなかったですね。
直前に読んだ「Iの悲劇」では、万願寺さんではなく西野課長が探偵役だったわけですが、探偵役がはっきりするまではエンタメとしてどこに焦点を当てて良いか若干わかりづらかった印象があります。
その点、探偵の役割が主要メンバー2人に割り振られているのはピンボケ感を感じなくはなかったです。試みとしてはわかるのですが。
古典部シリーズでも、もし里志の推理が的を射てたらちょっと読みづらいと思うんですよね。
最初に挙げた通り、構造上仕方がないのですが、諸手を挙げて大成功!という構図ではない印象があります。
全体
というわけで、面白いのは面白いんですが、「古典部」「小市民シリーズ」の流れでキャラクタに期待しすぎたので、読み終わってみると「う~ん…」という印象の作品ではありました。
いや、面白かったんですけど、クリティカルヒットはしなかったなーという。
あと、1つ目の話からちょっとキャラ背景(男子高校生)と謎の舞台設定の合わなさがあったり、微妙に粗い印象はなくはなかったですね。
一応、物語内で説明はされていましたが、全体的にどうにも舞台への誘い方が雑というか…。
(特に1つ目は「犬はどこだ」みたいな話でやってよ、って感じでしたね)
まあ、色々言いつつも、2作目も読むんですけどねー。1作目を乗り越えた二人のキャラが立っていることに期待です。