乙嫁語りの最新15巻をようやく購入して読んだので、感想を記録しておきます。
15年ももう惰性で読んでいる作品ですが、やはり味わい深くて良い作品ですわ。森薫先生さすが。
中央アジアから舞台はロンドンへ
スミスが無事にロンドンに帰り着いた結果、タラスとのロンドン編が開幕しました。どんどんぱふー。
まさか中央アジアからロンドンに場所を移すとは…って感じですが、スミスが帰らないとタラスと結婚できないのでそりゃそうですかね。
思った以上に理解にあふれるスミス一家に読者も安心
当然、突然現地妻を連れて帰ってきたスミスに対して皆あきれ顔ではあるのですが、強く正面切って反対しているのは母親だけという展開。
そもそも、トルクメニスタンにフィールドワークに行くようなある種の奇人であることを男衆はすでに認識しているわけで、想定外だったとしても、スミスの行動として違和感はない、ということなんでしょう。
「エマ」では散々身分違いの婚姻が擦られたわけですが、時代も進み、スミスの家も実業家の側面が強く、そもそもどこで野垂れ死にしてもおかしくない環境に行っていた次男が何をしようと、長男さえきちんとしていれば問題ないということなんでしょうか。
この手の展開だと、前途多難感が出るわけですが、友人のホーキンス氏やスミス父、スミス兄ともにきわめて理解がある人種であり、公式には中々見分が悪いとしても、スミスやタラスが暮らしていくのに苦しさを感じるような展開には早々ならなさそうで、一安心です。
というか、タラスはもう散々曇らされてきたわけなので、この幸福を維持して行って欲しいところですわね(争いごとは中央アジアで今後出てくるでしょうし…)
文化の違いはあれど、幸福の形は変わらぬという示し方
ロンドンにうつったとしても、暮らしのベースにあるキッチンは似通っているし、大きくは変わらず、何よりも心を許した人と生活が出来るのがうれしいというタラスの感傷は味わい深いところです。
乙嫁語り(というか森薫作品?)はその辺、一貫しており、暮らし向きが苦しいとか、色々な事件があるとか、まあそういった事情にかかわらず、日々の暮らしをきちんと送る中で幸福がある、ということが伝わってくるんですよね。
仕事でちょっと疲れているとき、あるいは何となく停滞感があるときに森薫作品を読み返すと、「平穏に暮らしているだけで良いのだ」という気持ちになれるのです。
家族を持つというのは、まあそういう幸福を得やすくする手法でもありますわね。
アリ、お前まで結婚するんかい
そして、オマケみたいにスミスの優秀な護衛&道案内だったアリくんが結婚しました。
結婚相手は今回初めて出てきた気の強そうな幼馴染キャラで、「財産を持っているアリが好きなのではなく、アリのことが好きなので結婚したい!」と言い放つ強いキャラです。いやー、このキャラいいですね。
で、アリは別に頓着がないので「いいよ」と快諾するわけですが、アリ側からすると「別に誰でもいいけど、自分を好いてくれている奴の方がよい」という程度の判断のようです。
思ったよりドライですが、特別気になっている相手がいないと、そんなもんなのかもですね。
お互いに好き、というステータスにはお互い随分と一緒にいるとか、お互いがお互いのことを好きになるような何かイベントがないといけないわけで、一般的にはそこまでの時間を一緒に過ごしたり、何かしらあることというのは稀なわけで。
お見合い結婚というのはそういうところからスタートして、お互い嫌いではないところから、好きな点を見つけていくものなのかもしれません。それが、アリの場合は「自分のことを好いてくれている」のが一つの好感ポイントだったわけですね(まあ、それは結構大きいことだとは思いますが)
結婚式でアリがスミスのことを思い出しながら、「いいやつだったんだよ」と言うシーンも趣き深いですね。
13巻ではアミルたちに会う機会が作れないままスミスはロンドンに戻ることになってしまいましたが、アリとも人生でもう会うこともないんでしょうかねぇ。アリとニコロフスキも二度と会うことはなかったりするんですかね。なんか、色々考えてしまいます。
次巻はまだロンドン編なのかな
まだスミスの結婚の話が終わっていないので、16巻はスミスの結婚の話と、14巻のアミル兄たちの部族結婚後の話あたりなんでしょうかね。前者も後者も楽しみですねぇ。癒しですわ。