teke teke my life 読書記録置き場

漫画や小説、アニメなどの個人的な感想の保管庫。

水上悟志作品の簡単な感想(だいたいプラネットウィズまで)

ようやくプラネットウィズを履修すると同時に、水上悟志作品を読み返していたので、簡単に感想をまとめて書いておきます。プラネットウィズまで、と言いつつ、二本松兄弟読んでないので二本松兄弟抜き。

初動の鈍さはあるものの、トータル味のする作品が多いのが良いですよね、水上悟志。

「惑星のさみだれ」「サイコスタッフ」が特に好きですが、短編集収録の「げこげこ」「ぴよぴよ」「わにあに」あたりもだいぶ好きですね。

短編

散人左道(全2巻)

デビュー作で、よくBOOKOFFで見かけた印象があります。

テーマというか、世界観的には結構そのあとも使われているので、水上悟志ファンは履修必須の作品なのですが、主人公もヒロインもいい感じに味(というか、水上悟志の癖)があって、かなり好きですね。

粗削りなところがあるものの、水上悟志らしい作品なので、「惑星のさみだれ」や「サイコスタッフ」が好きならけっこうおすすめです。

げこげこ(全1巻)

短編集その1です。

短編ごとに良し悪しはあるのですが、表題作の「げこげこ」を読むためだけに買っても良い短編集ですかねー。おすすめです。眼鏡っ子の理解あるヒロインという属性が強い。

「伝説の男」も今となってはよくある感じの短編ではあるのですが、Twitterの存在しない20年以上前の作品と思うと、アイディア的には新規性があったのではないかと思いますね。

その後の短編集に収録されている「ぴよぴよ」「わにあに」と同じ流れの水上悟志作品にしかない味が感じられる作品で、めちゃめちゃ良いです。ヒロインも可愛いし…。

エンジェルお悩み相談所(全1巻)

全1巻の中編作品です。

ワードのチョイスや力の抜き方に水上悟志らしさもあり、面白くなくはないのですが…。全1巻でこう、しゅっと収束していってしまい、面白くなる前に終わってしまったような印象があります。

短編集の中の面白い寄りの作品、というぐらいの位置づけ。

結構こう、感想を出力するのが難しいですね。ファンがお布施で買う感じの作品ではあります。

古い作品ではあるのですが、2012年に新装版が出ているので、手に入れやすいのは良いですね。

サイコスタッフ(全1巻)

水上悟志作品の中でも随一にまとまって面白い作品ですね。

水上悟志作品には珍しく、スッと入ってスッと読めてちゃんと面白いのも大きく、「惑星のさみだれ」よりも人に薦めやすいです。

主人公とヒロインのキャラ立ち、周囲を取り巻くキャラ、全1巻でしっかりとまとまったテーマとキャラクターの関係の進展と、水上悟志らしさもありつつ、まあ120点の作品ではないかと思います。

水上悟志作品のヒロインが明確に可愛くなったのもこの辺りからじゃないですかねー(まあ、それ以前も可愛いのですが)。ヒロインの梅子、めっちゃ好きなんよなー。

単行本の表紙もタイトルも変に凝ってないのが奥行を感じさせてめちゃめちゃ良いんですよね…。好きすぎるぜ…。

ぴよぴよ(全1巻)

短編集その2です。

表題作の「ぴよぴよ」は水上悟志の短編の良い部分が出た作品で本当に好きですね。力の抜け方が正しく作用するとこうも良い作品になりますか。

それ以外の短編はまあ、それなりです。「ぴよぴよ」を読むために買う感じですね。

宇宙大帝ギンガサンダーの冒険(全1巻)

短編集その3で、「惑星のさみだれ」完結後の短編集なので、急激に絵がレベルアップしています。「わにあに」も絵がレベルアップしたから描けた作品ですね。妹のビジュアルが強い!

「惑星のさみだれ」で単行本派が読めなかったであろう後日談が収録されているので、それだけで買った人も多かったのではないでしょうか。

ワイ、この後日談めっちゃ好きなんですよね…。読むたびに泣いちゃう…。

他作家とのブラコンアンソロジーliqueur収録の「わにあに」が収録されているのもポイントです。「わにあに」はシュールな作品ですが、刺さるひとにはめちゃめちゃ刺さる作品ですね。

ただ、基本的にはほかの作品との関連が強いのと、実験作的な側面もあり、かなり厳しいレベルの作品もあったりします。

その点、水上悟志の熱心なファン向けの短編集ではあり、「惑星のさみだれ」の外伝を読むために買う短編集ですかね。

長編

惑星のさみだれ(全10巻)

水上悟志と言えば…という代表作です。まあ、最近は「スピリットサークル」とかもあったりするのですが、とはいえ、代表作ですね。

大人が導いて、子ども(というか青年?)が精神的に大人になっていき、さらにその下の世代を導く役回りになり…という流れが素晴らしいんですよねー。

1巻の段階でこの主人公がこんなに精神的に圧倒的な成長を遂げると予想した人がいただろうか。

「大人になる」ことにポジティブになれる話でもあり、「未来」への希望を感じられるようになる話であり、大学生ぐらいの年代の方には非常に刺さるのではないでしょうか。

(というか、まあ実際刺さったのですが。)

一方で、序盤は絵のレベルや構成も含めてかなり厳しい作品でもあり、手放しで人に薦められる作品かというとかなり微妙です。

特に、主人公の魅力がかなり薄い段階である2巻を超えるまでがだいぶしんどいですし、その先ももうしばらくの辛抱を要求されるのもちょいきつめ。

全巻とりあえず読んでみる前提がないと、厳しいすね。水上悟志、いつもスロースターターなんだよな…。

なお、水上悟志、「惑星のさみだれ」中盤から急激に画力が高まり、特に女の子を描くのが上手になります。

1巻では魅力のなかった姫も小悪魔的に感じられるようになり、アニマや白道さんもとても魅力的に見え、それぞれの覚悟が画で魅せられるようになり…とかなりの変容を見せます。

物語が盛り上がるタイミングで画力が追い付いてきたのも、序盤対比で中盤以降が異常に面白く感じられる要因かもしれませんね。4巻の表紙とか好き。

戦国妖狐(全17巻)

全17巻と実は一番の長編です(なんか単行本の厚みがやたら薄いのですが…)。

2作品連続でスロースターターぶりを発揮して、序盤はかなり面白くないのですが、戦国妖狐の妖狐要素を外す(というか主人公を交代させる)という離れ業により、中盤以降は盛り返して、きちんと面白く仕上がっていたりします。

途中から脈絡なく主人公が交代して面白くする手法、コミックブレイドとかいう媒体かつ、固定ファンが付いていたから可能だった手法よなー…。

年代ジャンプによる成長とか、屁理屈バトルとか、主人公交代後の流れはかなり好きなんですけどねぇ。迅火編が正直暗いし面白くなくてキツいからなぁ…。

スピリットサークル(全6巻)

全6巻で短くて設定にエッジが効いてて面白い!ということで定期的に何かの媒体で見る作品です。

「惑星のさみだれ」がスロースターターすぎて微妙にお薦めしづらいので、水上悟志作品の中では代わりに薦められがちです。

まあ、画力も上がって、構成もちゃんとしているので、それはそうですね。

ただ、個人的には設定は面白いけど「惑星のさみだれ」や「サイコスタッフ」ほどの芯を食った感動はなかったかなーという作品ではあります。

いや、面白いのですが、好みの問題ですね。主人公や周囲の人の圧倒的成長や濃いい主張が水上悟志作品のすきなところなので、そこの味付けが濃い方が好きなんですよ。

プラネットウィズ(全8巻)

アニメ原作をやったアニメの漫画化という一周回った経緯で作られた作品です。

水上悟志の過去作の良かったところをめいっぱい詰め込んだのですが、どこかで読んだ展開の印象が拭えず面白いんだけど、今一歩足らないような感触を最後まで感じさせます。

もしかしたら、水上悟志初履修だと新しさで「おお凄い!」となるのかもしれないのですが、敵味方の入り乱れは「惑星のさみだれ」でやったし作中の大幅な年代経過と成長は「戦国妖狐」でやったしなぁ…。

また、相変わらず設定が腹落ちするまでのスロースターターな感じもあります。キャラが多すぎるんですよね、たぶん。

主人公、ヒロインあたりはいいのですが、あと4人ぐらい役割をくっつけて減らしても良かった印象があります。

というわけで、どこかで見た水上悟志の詰め合わせであり、及第点ではあるのですが、「スプリットサークル」と違ってこれは!!!って感じではなかったですね。

まあ、アニメ原案と思えば、水上悟志らしさが詰まっていて良いのですが。