久しぶりになんとなく米澤穂信の「犬はどこだ」を読んでいましたが、やっぱ好きですねー。久しぶりに読んだ感想をだらだらと書いておきます。
なお、若干ネタバレありです。
キャラが好きなんよな
主人公が辞め銀行員なのすき
主人公が銀行員生活のストレスにやられた設定なのは好きですね。
主人公の咄嗟に見せる外交性や緻密さに納得感を持たせつつ、一方で疲れた大人としての良い意味でのくたびれ感を持たせるにはちょうどいい設定です。実際、執筆された当時の金融マンは死ぬほどつらい。
ただ、2年ぐらいで辞めた設定はちょっと現実と乖離している感はあって、2年目ぐらいだともうちょっと能力的には下のラインだったり、職務的にももうちょい下のラインかなーという印象です。5年目ぐらいじゃないかね、君。
ハンペーのキャラもいいよね
相棒のハンペーの意外な有能さも良いですよね。
加入経緯が唐突かつ意味不明でめちゃめちゃ怪しいのですが、一人称で動くシーンが多くあるので、ただただ馬鹿っぽいけど有能な男だということがわかります。
米澤穂信作品の助手ポジション(堂島健吾、里志あたり)の中では自動行動機能付きなので随一使えるやつなのではないでしょうか。
しかし、ハンペーのキャラと主人公のバディ感も組み合わさると、実写ドラマでイケメン俳優組み合わせるとめちゃめちゃ売れそうですよね…。
まあ、 実写ドラマにするには、ちょい昔のネット文化、というかネット論壇的な雰囲気がわからないとちょいピンとこない部分もある話ではあるので、ちょっともう年代が古い感ありますけど。
今だったらSNS上でのトラブルとかに置き換わるのかもしれないですが、SNS上でのトラブルだと交通事故感が薄れて、微妙な塩梅で成り立たない感じはありますね。
(しかし、米澤穂信、チャットルームの描写が的確でいいですよね。LINEにはないチャットの感触、なんだったんでしょうね…)
ミステリ部分
当然面白く、米澤穂信作品らしさ全開
「このミステリーがすごい!」が盛り上がりを見せていた2000年代前半の上位ノミネート作だけあって、ミステリとしても非常に面白いです。
積み上げてきたものがグルッと回転する感じや最後の読後感の悪さも含めて素晴らしいですよね。これぞ米澤穂信作品!という強い作品です。
(まあ、オチ自体は途中の赤ずきんとかで示されていますし、読者はハンペーの情報も持った上で主人公パートを読んでいるので、大抵の読者は主人公より先に感付くと思いますが)
とはいえ、ハンペー側の情報も含めて全てのピースを知った主人公が正解に辿り着く瞬間の盛り上がりが凄くいいですよねー。主人公と同期して全てがわかった感覚になるというか。
妹のコペンで事件現場に爆走するのも好きすわ。
最後事件現場に行くメリットあんまりなかったよね
尚、結局特に何も救えず、解明してしまった結果犯人に怯える主人公の姿が印象的なラストですが、正直、あそこで事件現場に駆けつけるの、あんまり主人公にとってのメリットなかったですよね。
駆けつけても情状酌量の余地がないネットストーカーの命が助かるかどうか(あとは依頼の達成ぐらい?)だけ、下手すると命の危険がある状況とすると、気持ちが悪くても忘れてしまった方が良かった説はあります。
まあ、あの緊迫感がないと、面白味がなくなっちゃうのですが。
続編まだかなー
「犬はどこだ」は続編が示唆されながらも続編が出ていない作品なんですよね。
続編出したら実写ドラマとか行けそうなポテンシャルはあると思うんですけど、キャラ的に主人公が「さよなら妖精」スピンオフの太刀洗シリーズと被るんですよね。
あと、太刀洗は日本中/世界中を舞台に出来る一方、探偵事務所はスタンス的に田舎町しか舞台にできないあたりが難点ですかね。
なので、同じような題材だと舞台に自由度のある太刀洗に出番が回ってきちゃうとかなんでしょうかね…。太刀洗の方がどんな前提知識があっても違和感ないし…。
キャラが立っている作品なので、もっと読みたい作品ではあるんですけどねー。いつか続編が出ることに期待です。